ショート小説集

□世界一の食事
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 宝クジが当たっていた。一等賞である。賞金は、一億円。
 今日、何気なくタンスの整理をしていたのがことの始まりだ。着古したズボンのポケットに触れるものがあり、なんだろうと思い取り出してみると宝クジ。去年買ったやつ。
 会社は休みなので散歩がてら近所の図書館へ行き、古新聞を閲覧した。当選番号の確認。そこで自分の持ってる宝クジが一億円の価値あり、と分かったわけである。
「今日が、換金の最終日かぁ」自宅の居間であぐらを掻きながら、俺は呟いた。宝クジの裏面にそう記載されていたのだ。
 壁の掛け時計を見ると十四時。銀行が閉まるまでには数時間あった。そこまでは歩いて十五分ほどの距離である。あせる必要は、まるでない。
 俺は煙草に火をつけた。「一年前ねぇ」
 当時を回想する。たしか、なけなしの金をはたいて駅の売店で十枚購入したはずだ。そしてその内九枚までは抽選日にすぐ当選番号を確認した。ことごとくハズれていた。
 残りの一枚、それがこれである。なぜか紛失していたのだ。
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