ショート小説集

□オニギリ半分の未来
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 日は高く、うだるような暑さ。かげろうが、立ち昇っている。辺り一面焼け野原。――そこを、幼い兄妹が行くあてもなく歩いている。
 坊主頭の兄と、長い髪の毛を後ろで束ねた妹。ふたりの身につけている服はひどく煤けて、ボロボロの状態。足取りも、おぼつかない。
「お父さんも、お母さんも、死んじゃったね」疲れの滲んだ声で、妹がポッリとつぶやく。
「ああ」兄はみじかく、言葉を返す。
「わたしたち、なにも悪いことしてないのに」妹の体が小刻みに震える。「爆弾が、いっぱい、お空から……」
 立ち止まり、泣き出した。今まで何度も流した涙。
「泣くな」妹を抱きよせ、頭をなでる。「お兄ちゃんが、お父さんとお母さんの代わりになるから」
 しかし、兄の目にも涙は浮かんでいる。まばたきひとつで溢れそうなくらいに。
「戦争って、大人のひとたちが始めたんだよね?」鳴咽まじりに、妹が言う。「お父さん、お母さんと同じ、大人のひとたちが」
「どこかの知らない大人たちが」ギシリと、兄は歯をきしらす。「勝手に始めたんだ」
 くそ! と叫んで地面を殴りつけた。
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