スザク×女の子ルルーシュ小説

□僕だけのお姫様〜番外編〜
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 あの頃の俺は、世界が真っ暗で、何もなかった。
 周りは真っ暗で、心も同じで。
 これだと、眠ったままで時を過ごす眠り姫と一緒だった。



僕だけのお姫様〜いつかまた会えるその日まで〜



 俺の目が見えなくなったのは、三歳頃らしい。
 と、言っても、俺は小さかったからそのあたりは余り意識してなくて、気が付いたらもうこの状態と言った感じだったけれど。
 最後に見た明るい世界は、顔にかかってくる何か。
 強烈過ぎるくらいに俺の顔も体も何もかもを真っ赤に染める世界。
 大きな音と人の引き裂かれるようなつんざくようなたくさんの悲鳴。
 人が真っ赤な海にどんどんと沈んで行く。
 ばたばたと人形にように倒れて、その場に重なりあう。
 大きな音と生きていた人が急に人形になってしまったこと、真っ赤に染め上げられた世界がすごくすごく怖くて、ぎゅうっと目を閉じて、開いたら真っ暗だった。
 医者によると精神的ショックで目が見えなくなってしまったらしい。
 そして、小さな頃はこの出来事は何だかわからなかったけど、大きくなってから聞いた話によると、俺は誘拐されてからその後、俺の目の前で俺を助けるために入ったやつと俺を誘拐したやつらとの間に一悶着あったらしい。
 それを目の前で見て、目の前で人が死んでしまった恐ろしさで、俺の世界はそれを受け入れられなくて、すべてが見れなくなってしまった。
 明るい世界は決まって、夢の中。
 夢の中も血まみどろで、真っ赤に染め上がるあの最後の時。
 怖くて暗いままで良いとさえ思えた。
 怖い、怖い、明るい世界は追いかけて来ないで。
 そんな気持ちのために、俺の世界はずっと暗い世界のまま。
 怖かったことを、今こうして話せるようになったのは、彼との出会いがあったからだ。
 彼がいなかったら、たぶん今も恐ろしくて、世界は真っ暗まま淀んでしまっていた。
 あの出来事は怖いまま俺の心に残って、今も蝕んでいたことだと思う。
 こうして、受け入れられて、怖くても自分は立っていて、明るい世界を取り戻せたのは、彼のおかげだ。
 枢木スザクがいなかったら、今も俺は変わらないままだった。



 俺の目は9歳になっても、いつまで立っても見えるようにはならず、そのため親兄弟たちは俺を不憫に思ったのか、随分と溺愛し大切にしてくれていた。
 まあ、目が見えるようになった今でも溺愛は続いているから、もしかしたら元からこういう家族なのかもしれない。
 家族以外の人間も、必要以上に俺に気を使って接してきて、それも気にくわない。
 俺には何一つ一人でさせてもくれないのだ。
 そして、俺が目が見えないのをこそこそと可哀想に、と話すのだ。
 俺は、目が見えない分に耳が良かったから、そういうのはちらほらと聞こえてしまった。
 わざとやっているのだろうかと思えるほど、気に食わないほどに、可哀想に可哀想に、と周りは何度も何度も繰り返す。
 人間は同情する生き物だから、それは仕方がないのだろうけれど、それでも俺は気にくわなかった。
 そのすべてが気にくわなくて、必要以上にそういうことをされることに疲れていた。
 そんな時、俺はブリタニアの友好国の日本へと、友好の証と交流のために向かうことになった。
 のちのち聞いた話だと、それはあくまでも表向きのことだったそうだが。
 精神的なものでいつまでも目が見えない俺を心底心配していた家族たちは、ブリタニアではなく違う場所で過ごすようになったら、心にも良い影響を与えられるのではないか、と話しあっていて。
 そんな時、スザクの父さんの日本の総理大臣でもある枢木ゲンブがそれを聞きつけ、彼には俺と同じ歳くらいの年齢の子供のスザクがおり、スザクは遊び相手もなるからと言う事で、俺に日本での静養を勧めてくれたそうだ。
 そして、友好の証と交流と言う名目で俺は日本に送られて、俺一人だと心配を言う事で、ナナリーも一緒に日本へと来てくれた。
 でも、初めて来た日本でも、俺の世界は変わらない。
 ブリタニアでも日本でも真っ暗なままで、心境も何も変わらなかった。
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