蜜処・参 【萬】

□ナマイキキツネの飼い慣らし方
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天気は快晴。
夏まっさかり。
蝉もミンミン鳴き喚き、次の夏に向け
必死に子作り活動に勤しんでいる。

空を見上げれば、綿雲は何処へと
ひっくり返って別世界へ飛ばしてくれそうな
青い海・・・ではなく空。


日差しを遮るものはなく、日焼め止めを
塗りたくった事の意味をゼロにするかの様な紫外線攻撃。

校庭にはゼハゼハ言いながら懸命に走る男子生徒たちの群れ。


「セーーシュンだなー」
などと、若干老人めいた発言をし、非常口の扉から校舎に入る。


なぜそんなコソ泥の様な真似をしてるかっつーと
現在リアルタイムに進行されている
美術の授業をサボって学校裏の駄菓子屋に買い出しに出ていたから。

なぜこの年にもなって「自画像を描く」なんて苦行を2時間連続でせねばならんのか。
描きたくなる顔でも描いてて楽しい顔でもないっつーのに。



非常階段から3階へ上り、出る時に開けておいた扉からこっそり入校。
私が所属するクラスは教室が廊下突き当たり一番奥の為他クラス教室横を通る事がない。

無事サボり計画お供を手にしてきた私は
ラノベ主人公の様な
「窓際」「一番後ろ」という奇跡的座席に着席。







「っふーーーーーーーーーーーーーーーーー」

猛烈に長いため息を吐く。
相変わらず快晴の殺人的な日差し。
校庭には修行僧のように懸命に駆けずり回る男子生徒の群れ。






「キツネ君は・・・なんの授業だろ」


ぼんやりと浮かぶマツゲの長い美青年。






『センパイが諦めるまで俺も・・諦めないスから』
『困らせてるんスよ・・・俺で悩めばいい』
『ホントに嫌なら・・本気出して抵抗してくれよ』



『我慢なんてしねェから・・・』










「〜〜〜〜〜〜〜ううう」





決して愛想が良いわけでも気が利くわけでもない。
自分最優先のバスケ中心で思考回路が巡る寝る事が趣味の
そんな彼が聞いた事もない、見たこともない表情で
囁いた言葉を思い出す。













あたしみたいな平凡以下のただのフツーの女に
親衛隊が出来るような美青年が熱烈告白をしたのは
かれこれ1ヶ月ほど前になる。
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