ぶっく
□平行線。
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「好き…好きやねん蔵…」
甘い声で、でも悲しげな声で弱々しく呟きながら抱きついてくる玖恩を強く抱き締める。
『俺も好きや…』
俺やない声で愛を囁く。俺やなくて白石の声で優しく甘美に囁いてやれば玖恩は嬉しそうに笑みを浮かべた。
目は俺のバンダナを使って隠しとる。理由は簡単…白石ではない俺を見ていたくあらへんから…。
「好き…ずっとそばに居って」
『おん。ずーっとそばに、一緒に居ったるわ…』
段々と辛くなる。苦しくなる。
苦しい苦しい苦しい苦しい。
白石のことがそんなに好きなんか?
あいつに好きな奴がおっても?
「優しいんやね蔵…」
目を隠したまま玖恩は続ける。
『おおきに』
俺は所詮道具としか思われてへん。
せやけどこれで玖恩のそばに居れるんやったら道具でもええ。
白石を想う玖恩。
玖恩を想う俺。
誰かを想う白石。
みんな想いは一方通行。決して交わる事なんてない。
それはまるで…
平行線ー…。