〜scramble〜

□〜scramcle〜
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「ただいまー」


琉羅は3人を連れて天使第一部隊アジトへ辿りついた


「おかえりー…ってうわ!?ちょ、2人とも大丈夫っ!?」


ひょこりと玄関に顔を出したのは天使のバキュラだった


バキュラはアジトで皆の帰りを待っていた

帰ってきた2人を見て青ざめる


それもそうだ

aoiは肩から大量の血が流れ、身体中に小さな傷が多数ついている。みやびは小さな傷こそ無いものの<氷の矢>が腕に突き刺さっているのだから。


バキュラは痛々しそうに顔を歪めた


そんな中、みやびが沈黙を破る


「バキュラ、私は大丈夫だからaoiの手当てを…」



嘘つき、今にも痛みで倒れそうじゃない


「そんなっ…みやびさんが先ですっ!!」



aoiはみやびに言う

しかしみやびはふぃっと下に目を向けた



…2人は優しいな…確かに戦っている時の私たちは悪魔そのものだろう。

でも優しさがある。
だからこそ天使で、第一部隊なんだろう。


優しさ、思いやりだけじゃ、悪魔に立ち向かえない。でも、優しさを忘れちゃいけない。少しの厳しさを持って、私たちは天使第一部隊にいる。



だから私も

第一部隊だから

頑張らなきゃ



「2人共同時にいく」


バキュラは優しくも少し鋭く言い放った


そして笑いかける



「なっ…バキュラ、それは…っ」


「大丈夫」


スッと軽く手を上げ、琉羅の言葉を遮った


心配させないために少し強く言ったのに…琉羅ってば…

くすりと静かに笑う



しかし、さすがにaoi、みやびにも2人同時にしてしまったらバキュラがどうなるかくらい察しがついた



「バキュラさんっ…」



「バキュラ、それは駄目だと思う」



aoiとみやびも止めに入る


しかしバキュラは2人の手を握り


「大丈夫だよ…。少し………『寿命が縮むだけ』」



ぎゅっと離れないように手を握れば自分から力を2人に送る


これが…私の特性だから

これが…私のやるべき事だから



「やだ!!やめてバキュラ!!!!」


みやびは手を離そうとする

しかしバキュラの決意が強すぎた、離れない



「バキュラさんっっ…」



aoiが呼び掛けてもバキュラは黙って力を送り続ける、時おり息継ぎが荒くなった



やばい…もうすぐ…



クラッとバキュラの周りが歪む


グニャリとaoiとみやびの涙に濡れた顔が歪んでいく



「泣かな…いで…?」


バキュラは手を離せば、スッと2人の頬を撫でる


2人はほぼ完治するまで力を送られ、急に眠気に襲われた



「バ…キュ、ラ…」



aoiとみやびは意識を手放した


そう、そのままゆっくりお休み…君達はその力をもっと使うべきだ


だって戦うために生まれた天使


私はそれをサポートする、そのために生まれた。

『空』の特性を持って…



私はこれが仕事なんだ…


バキュラは力を使いすぎたのか、クラリとバランスを崩した



ふわっ―――



琉羅が倒れそうになったバキュラを支え、抱き抱えればソファに寝かせた



バキュラは意識を手放しているようだ



aoiとみやびは設備されている治療室のベッドに寝かせられた



「バキュラ………」



2人を運び終わった琉羅は再びバキュラのところに戻り



「もうすこし…自分の事も考えてくれ…」



ソファで眠っているバキュラを見つめて、サラリと髪を撫でた




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「ただいまー!」



「…あれ、もういるし」



最後に帰ってきたのは王子と闇猫だった



零翔をみるなり闇猫はホッと安堵のため息を溢した



「……おかえりー、ところで王子、闇猫…その傷…」


クリスタルが見つめた先には、傷


深くはないが、無数の切り傷は2人に対称的についていた



「やみやみと喧嘩した」



「はぁ?」


思わぬ答えにクリスタルはすっとんきょうな声をあげる



しかし、すぐに他のメンバーと「なるほど…」と言うように首を縦に振った



「今回は俺が悪かったから、抱き枕買ってやったら許してくれた」



闇猫は大きな黒猫のヌイグルミを見せる


「何故に黒猫?」


ファイはにやにやと王子を見つめ問う



「なんか王子が黒猫がい…」



「わああぁぁあっ!!違う!!黒猫しか無くて仕方なくっ…」



「へ?兎とか羊とかあっ…」



「わああああああああああああああああああああああああっ!!」




その夜、王子の叫び声が響いたのは言うまでもない

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