〜scramble〜

□〜scramble〜
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「う、そ…ノクティス…?」



怪我を負ったクライシスは虚ろな目をしたノクティスを見つめる



「………ころ、す…」



ノクティスのものとは思えない濁った声…短く発した言葉で天使たちの顔は青ざめていく…



「…おいおい、ノク」



沈黙を遮ったのは…ファイ


ふわりと羽を雪に変えて降らせる

ファイの特性は【雪】
相手の体を硬直させる


「………っ」



「お前さ、そんなのに惑わされるような弱いやつだったわけ?」


――――…また沈黙


その中に、パリンッ…と氷が床に叩き付けられる音が聞こえた



そして…



「……、………あれ?」


フッとノクティスの目に光が戻った

ファイはホッとすると、雪を羽で吹き飛ばした



「え…これって…」



ノクティスは散らばった凍り付いた羽を見れば、腕に切り傷を負ったクライシスに目を向けた




瞬間、ノクティスの顔は青ざめ、体を小刻みに震わせ始める



「何だよ…これっ…」



「ノクティスさん、私は大丈夫ですから…」


空の特性をもつクライシスは、自己再生を始めた。その姿、言葉を聞けばノクティスの額から汗が滲み出る…



「俺なのか…?やっぱり俺がやったのか!?」



「ちょっと落ち着け…」


「落ち着いてられっか!!」



騒ぎ立てるノクティスに落ち着くように言うファイだったが、ノクティスは自分がやってしまったという罪悪感に押し潰されていた



ファイも声を掛けようとするが、掛ける言葉がまとまらない



そんな時、クライシスが近づいた



瞬間、パンッ…と弾く音が響いた―――…。



一瞬、時が停止したかのように空気の流れが止まった

ノクティスの右頬が少し赤くなっている




少しして、やっと気づく…

頬に痛みを感じた



「クライシス…?」



「いい加減にしてください。私に傷をつけて悪く思ってるなら壊れないで、ノクティスさんを動かした敵を倒すぐらいしてください。」



強く言い放った。
ノクティスの目からふいに涙が溢れる…。


強く言い放たれた言葉の中に含まれた優しさが、ノクティスには分かったのだ



盗聴器から『チッ…ゲームオーバーか…』と言う声とため息が聞こえたと思えば、プツンッ…と接続の切れる音が耳に届いた



「絶対に許さない…」


クライシスの言葉に、第一部隊は皆、首を縦に振った




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


一方その頃



「…王子、何かあったか?」


「いや、神のことについてもあまり詳しく書かれていない…」



闇猫、王子、零翔は図書館にきていた。大きな図書館なはずなのだが、やはり甘く見ていたのだろうかと不安になる。


零翔の父親は一体どうやって悪魔になったのだろう…


勿論、悪魔のことも調べてみたが悪魔のなり方なんてものはない



王子は話の大きな矛盾に頭を抱えた。


その時



『…手伝いましょうか?』


「……は?」


王子の耳元でハッキリと声が聞こえた。バッと振り向くが誰もいない。


王子はまた本に目を移す、


するとまた…



『手伝いましょうか…?』


―――ちがう…

王子は気付いた
耳元で声がしてるんじゃない



頭の中に響いてる…!!



『手伝いましょうか?私なら、見つけられますよ…?私を…………







出してください』




「うぁぁぁぁぁあああッ!!」



突然頭に激しい痛みが走った。周りの人たちは皆、気づいていない…寧ろ、皆周りに「いない」と言った方が正しいのか…



王子は全くちがう空間にいた。
真っ白な誰もいない空間に…。



「やみや、み…?零翔っ…?」



あたりを見回す。

すると真っ白な世界が広がるこの空間に、もう一人…女の子



パンダ耳、銀髪、サイドテール、優しい笑顔…―――



「誰…だ」



「初めまして、ですかね?私は知ってたんですが…。私は[ぱんだ]。もう一人の貴方です。」



彼女はにっこりと微笑みを浮かべる。
その微笑みは、恐怖を覚えるほど恐ろしかった…。

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