〜scramble〜

□〜scramble〜
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…今日もまた
そして明日もまた


彼は狂うのだろうか。
昼の彼の明るさと優しさは、嘘なのだろうか。

それとも…
夜の暗く残酷な彼が嘘なのだろうか。


……後者であって欲しい。そう毎日願う闇猫の想いは1日1日、少しずつ壊されてゆく…、



今日もまた、



「ん…王子…?」


ガタッと王子が起き出す。
時計を見ると夜中の一時を回っていた。


「………」


窓の外を見つめる王子は、名を呼ばれると、ゆっくり振り向く。


月の光で不気味に浮かび上がる王子の姿…

闇猫は目を細めて


「誰なんだ…。」


闇猫は顔を歪める…月明かりのせいではない。
王子の瞳が…青く輝いていたのだ。

王子の瞳は深紅のはず。冷たい深い青、海のように光る瞳は

まるで悪魔のように…




「………、」


王子は無言のまま窓を開ければ飛び出していった


「…っ!まて!!」



闇猫は急いで追いかける

行き先は分かっていた





…―――人間界…


彼は毎日のように人間を悪魔に変えていく。人が変わってしまったかのように…。


「やめろ!!やめるんだ王子!!」


「……………。」


ヒュッ…


邪魔だと言わんばかりにナイフを投げ付ける王子


「……ッ!王子!!」


「………、」


ピタリと動きが止まった。
闇猫がホッとした、その時…



バサ…ッ



「…ッ!?」



王子の背中から黒い翼…

ハラリ…ハラリ…と羽が舞い散る



「お…じ…?」


悪魔…?

闇猫は目を疑った
何度も何度も目を擦り、何度も何度も、彼の姿を瞳に映す


しかし…何も変わらず、今まで天使の翼を持っていた王子が、黒い悪魔の翼を持っている。



黒い羽で視界を奪われてしまいそうだ…


「王子、なのか…?」


闇猫は確かめるように問う。
王子はいつも、朝になるといつもの王子に戻っていた。


今、目の前にいるのは王子だと思いたくない…

だって王子は…
優しくて、不器用で、明るくて、皆をいつも笑顔にさせる…。

それなのに今は…
怖くて、冷たくて、暗くて、今にも全てを闇に包んでしまいそうだ



「王子、じゃないよな…?」


闇猫は続けて問う

しかし返事は返ってこず、その代わり…ニヤリと不気味な笑みを浮かべた


『今日はもう…』


小さく呟くように王子は言うと、黒い翼はバラバラに散り…天使の翼に戻っていた

フラリと足元を狂わせ倒れ込んできた


「…っ王子!」



闇猫は王子の体をささえ、きを失っていることに気付いた



「…王子」


闇猫はスースーと寝息をたてる彼を見つめ頭を撫でる



「お願いだから…王子に戻ってくれ…」



そう言って王子を抱き抱えれば天界に戻っていった



いつか必ず、いつもの王子に戻ってくれる

そう信じている闇猫は
『彼女』の存在を…まだ知らない

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