民警

□疑心疑笑
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「ボリス」
「あ?なんだよ」

思わず棘のある返事をしてしまったことに少しだけ後悔した。
こいつは悪くない。
当たったってどうしようもない。

「手、赤くなってるよ」
「ん?あぁ別になんともねぇ」

指を指された所を見ると確かに赤く少し腫れている。
さっき殴った時のもんだろう。
痛みは少しあるが全く問題はない。

「あのさーボリス」
「だからなんだ、…」

さっきから俺の名前を呼んでばかりいるコプチェフに苛立ちを感じた。
未だに扉の前から動こうとしない奴の方を向くと、笑っていた。
いつもの、誰にでも見せるあの笑顔で。
イラついた俺を前にしてこんな顔をするのはこいつだけだ。

「俺の前ではさ、気にしないでいいっスよ」
「…は?」

意味のわからない言葉に変な声が出た。
指に挟んだタバコすら落としそうになる。
こいつ、今なんつった?

「わりぃ、理解できる言語でしゃべってくれ。何だって?」
「だから、俺の前では気にしなくていいから」
「意味がわからねぇよ」

クスクス笑いながら俺の隣に腰掛けるコプチェフ。
拍子抜けした。
相変わらず調子狂うなこいつ。
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