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□Sempre nel cuore.
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「それじゃ、アイリーンはイタリアから来たの?」
無理やりに近くカフェテラスに連れてこられたアイリーンは興味津々で自分に迫るカレンの女の子にたじろいでいた。
アリスと呼ばれたその子の隣にはベラとエドワードが並び、その反対にはスレンダーでストイックな美男子が無言で座る。
その美男子の視線が自分を探っているようでアイリーンは居心地悪そうに苦笑せざるおえない。
「ほら、ジャスパー。そんなに睨まないで。怖がってるわ」
アリスに腕を絡められ美男子はわずかに目を細めた後、ふとやわらかに微笑む。ごめん、そんなつもりじゃないんだ。
―――つもりもないのに、睨まないでほしかった。
『いえ・・・。イタリアにいたのは数年で、その前はフランスとイギリスにいました』
「そうなの?両親の仕事か何かで?」
ベラが首をかしげて言う。
『・・・・・・まあそんな感じです』
どこか歯切れが悪い言葉。アイリーンとしては「恋人の男性と二人でです」なんて言えないから仕方ない。
「そうなの。家は市街地に?」
『はい。ラプッシュの近くです』
ラプッシュと聞いてカレンたちの顔色が一瞬かわるも、ベラが取り繕うように続ける。
「そういえばさっきのブレスレット。恋人から?」
今度は落ちないようにとしっかりと腕に巻かれた細いチェーンブレスに視線を落とす。
言ってもいいのかなと思案しながら、赤い顔でこくりと頷いた。
「いや〜!この子、可愛すぎるわ!」
アリスがムギュッとアイリーンを背後から抱きしめる。低い体温と固い身体を感じさせない人間っぽい仕草だった。
ジャスパーが不安げにアリスを見つめるも、当の本人はどこ吹く風。アイリーンのミルクティー色の長い髪を指先でいじっている。
「きれいな髪ね。ねえ恋人はどんな人?」
―――どんなひと・・・・・・どんな、おおかみ?・・・・・・これは言っちゃいけない。
『高校の教師です』
一拍おいてベラが押し固まった。カレンたちも互い顔を見合わせる。
それらに気づかないアイリーンは返事がないことに首をかしげる。
「どうしました?」
ベラは心の中で思った。転入生はきっとワケありのお嬢様に違いない、と。
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