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□Sempre nel cuore.
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―――"高校生活"も、以外と楽しいのかも。
カレンやベラとカフェテラスで別れた後、帰宅するべくエントランスを抜けながらアイリーンは思った。
―――ベラとは友達になれそう。カレンの子たちは少し苦手だけど・・・・・・。
「ねえキミ。ひとり?」
・・・・・・前言撤回。やっぱり苦手。
駐車場に出てすぐ、数人の男に絡んできた。
『・・・・・・何用でしょうか?』
壁と男たちに囲まれた状態のまま、おずおずと尋ねる。男たちはアイリーンの容姿を舐めるようにジロジロ見て、ニヤリと嘲笑った。
「こいつ、転入生だろ?ちょータイプなんだけど」
「てか、『何用』って。お嬢様かよ」
ひとりの男が覗き込んでくるのを、アイリーンは上体を反らして回避する。
そのまま周囲に視線を巡らせるが、運悪く人通りはない。どうしようかと悩んでいるところに角から曲がってくる人影が見えた。
「アイリーン?」
・・・・・・ベラだった。それもカレンの恋人は一緒にいない。助けを求めていたが、彼女だけだと逆に巻き込んでしまう。どうにかしないと。
アイリーンの置かれている状況を性格に理解したベラの顔が引つる。
「なに?オトモダチ?へぇ〜彼女も可愛いじゃん」
ひとりの男がベラの腕を乱暴に掴み上げた。それを見たアイリーンが目の前の男を睨む。
『どいてください』
「あ?」
『どいてくださいと言ったんです』
もう一度強めに復言しつつ、上体を曲げる。
「――はっ?消えた!?」
アイリーンはヴァンパイアの速さで男の間を抜け、次の瞬間、ベラの腕を掴む男の手首を造作もなくひねり上げる。
「イってッ!!この女!」
人間の域を超える腕力。まして女性のものとは思えない。男たちは驚愕に目を見開いてアイリーンを凝視する。
ノエルにはくれぐれもバレないようにと念を押されていたけれど、そうも言ってられない。
ベラを守るためにさらに力を込める。
『・・・・・・』
そして無言で手を放せば、男は無理やり曲げられた関節の痛みに情けなく呻いて膝を折る。
とそのとき、タイミングよくカレンたちが現れた。エドワードはすぐにベラに駆け寄って彼女が無事かどうかを確かめている。
ジャスパーとアリスは呆然とする男たちに見向きもせず、アイリーンを凝視する。
それに加えて遠くのほうで、名前の知らない男女、けれど多分カレンの子たちが疑いの眼差しを向けてくるのが見えた。
今の自分の行動を見ていたに違いない。アイリーンは悲痛そうに眉をひそめて、無言を貫いた。
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