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□紅の雪椿
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01「北の鬼」(シリーズ/北の棟梁・蓮水葵/女鬼)






『ここが、京。――雪村千鶴はこの町のどこかに・・・』


今しがた京の町に着いた旅装の女はひとり、町に入るための関所の前で小さく呟いた。


刻は宵。すっかり日が落ち、夜の帳が辺りを支配していた。


関所を抜けた女は人出の少ない大通りを淡々と歩いていく。


『たしか彼女がいるというのは・・・――』


キーン――!


『?』


ふと遠くのほうで刀同士を擦り合う甲高い音が響いた。


続くようにして怒号が響く。


女は秀麗な面をわずかにひそめてため息をついた。


『これはまた、分かりやすいな・・・“あの男”もここに来ているのか』


薄く笑みを浮かべた女は騒ぎのほうへと足を向けた。


その手は腰にさした刀の柄へとかけられていた。






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