Short novels

□Borderline Age.23
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目の前には、椅子に座る悟空。
だが、つい先ほどまで短かった茶色の髪は肩を過ぎるほどまで伸ばされ、見つめる先の顔はいつもよりも僅かに高い位置にある。
金の瞳は変わらないのに、その瞳がどこか大人びている。
顔つきも、子供こどもしていた悟空よりも顎がスッと通った少しだけ大人びたもの。

「あの〜、つかぬことをお聞きしますが……今、お幾つですか?」

そう問うのは八戒。

「………今年で、23歳」

そう答えた悟空のすぐ隣では、悟浄が椅子から転げ落ちる音が盛大に部屋に響いた。







「…………つまりは、貴方は現在23歳の悟空で、森の中で一緒にいた人と離れてしまって今に至る、と」
「ん、そうそう」
「…………信じらんねぇ……」

八戒は少しだけ頬を引きつらせて、悟浄は信じられないと目を白黒させて悟空を見つめた。
当の悟空はというと、そんな八戒と悟浄の様子を気にするわけでもなく目の前に置かれた菓子類に手を伸ばしていた。
三蔵は腕を組んだまま沈黙を貫いている。

「………どうやら、悟空だけがこちら側の……過去の世界に来てしまったみたいですね」
「でもよ、そんなことってあり得るのか?」
「でも、そう説明するほかないでしょうが」

悟空と三蔵の目の前で、八戒と悟浄が唸るように今の状況を語っている。
三蔵は二人のことを視界の端に捕らえながら、斜め向かいに座る悟空の顔をチラリと視界に映した。

常の悟空よりも、幾分か大人びた悟空。

顔つきや体つきもそうだが、何よりもその雰囲気が“大人びた”と感じさせる。
それでも、今の自分よりは子供だと感じるが。

「あのさ」

八戒、悟浄が、悟空の声にその動きを止める。
何事かと、悟空のほうに視線を向けた。

「ちょっと言いにくいんだけど……。腹減ったからさ、どっか食べに行かない?」

その言動は、常の悟空とまったく一緒で。

「………やっぱ、猿はどこまでいっても猿なんだな」

悟浄は、悟空には聞こえないくらいの小さな声でそう言った。
妙に納得の出来る言葉に、三蔵と八戒も心の中で頷いていた。



 
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