Short novels

□背中合わせ
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周りには、いつも通りの戦いの音。
目の前を勢いよく通り過ぎるのは、茶色の短い髪。
ソレは、如意棒を振り上げて目の前の妖怪たちをなぎ倒す。

あぁ。
いっそ、気持ちいいほどの戦いぶり。

目の前の妖怪の頭を銃で吹き飛ばすと、ちょうど弾の無くなった弾倉を素早く外し、同じだけの速さで銃弾を詰め直す。
カシャンという音と共に弾倉を元に戻すと同時に、背中にトンと当たった人の背の感触。
振り向かなくても、誰のものかなんてわかりきっている。

「三蔵、これ終わったら飯行こうな!」

背中から声の振動が伝わってくる。
それは心地良い振動。

「テメェは飯のことばっかりだな」
「そんなことねぇよ!ちゃんと他のことも考えてるって!」

詰め直した銃弾で、目の前に迫ってきた妖怪の心臓を打ち抜く。
その左腕から伝わる振動も、悟空に伝わっているのだろうか。
悟空の体から伝わる振動のように。

「例えば………」

背中の感触が離れていく。
ヌクモリが離れた背中は、移った体温の分だけ肌寒く感じた。

「三蔵の背中ってアッタカイよな。そう考えてる」

そのまま、再び荒野の地面を蹴って走っていく。
銃を放つ口実に振り返って見たその背中は、思った以上に大きく見えた。

「………おちおち、立ち止まってもいられねぇな」

もとより、そんな気はないけれど。
それでもどんどん大きくなっていく背中に、少しだけ焦燥が走る。

けれども、追いつかせてなんかやらない。



「テメェとの背中合わせほど、危険なもんはねぇな」



それは、背中合わせのキケン





 
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