小説(ラハフロ以外)

□桜吹雪
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仕事がひと段落したので、机に肘をついてぼんやりしていたら、不意に背後に気配を感じ、慌ててエトワールを抜いた。
「・・・ぶっそうな女だな」
「あ、殿下」
後ろに立っていたのは、ラハールだった。
エトナは銃をしまいながら、
「気配を消して近づいてくるから、つい」
「“つい”で銃口を向けるな」
ラハールは呆れたようにため息をついた。

「なんか用ですか?」
「う、うむ・・・」
ラハールから声を掛けてきたくせに、話しづらそうにしているので、少しイラついて急かした。
「用がないなら、あたし、もう行きますよ?」
「い、いや。待て・・・。これから、ちょっと付き合ってもらいところがあってな」
「今からですか・・・?」
そろそろ日が傾く時間だ。
せっかく仕事も終わり、あとはのんびりするだけだったのに。

エトナは不満そうに顔をしかめた。
「残業はお断りです」
きっぱり言い放つ。
「いや、仕事ではないのだ。・・・だから・・・。
・・・もうよい、とにかく付き合え!」
そう言って、先にスタスタ歩いて行くのを、エトナは慌てて後を追った。

ラハールに追いついたのは、ゲートの前だった。
ラハールが自分を待っている姿を見て、エトナの心臓は早鐘を打った。
自分でも何故だか分からなかったが、早足で追いかけたせいだけではない気がした。

一体、どこへ行くつもりだろ?
仕事じゃないってことは・・・。
まさか・・・。

不審に思いながらも、ラハールの後についてゲートをくぐると、あたり一面、見渡す限りピンクの雪が舞っていた。
雪かと思ってよく見たら、それは花びらだった。
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