小説(ラハフロ以外)
□誰が為に鐘は鳴る
2ページ/4ページ
でも、仕事は仕事よ。
あたしは、いつも通り、書類の束を抱えて、殿下の部屋のドアをノックした。
―――コンコンコンッ。
しばらく待つ。
が、返事がない。
まさか、逃げられた!?
書類がたまってるのに!!
あたしは勢いよくドアを開けた。
殿下は、ちゃんと、部屋にいた。
椅子に座ったまま、机の上につっぷして。
そうっと近づいて覗き込むと、気持ちよさそうに眠っていた。
叩き起こそうと、手が伸びて―――・・・
そのまま、なんとなく殿下の寝顔を眺めていた。
こんな近くで、殿下の顔をまじまじと見たのは初めてかも。
寝てると、けっこーカワイイかも。
起きてるときは、クソ生意気だけどねー。
無意識に、すっと手が伸びた。
おそるおそる、殿下の髪を触ってみる。
気付かれない。
それをいいことに、もっと大胆になる。
おでこ、頬を巡り、唇にそっと触れた。
「う・・・うぅむ」
殿下が身じろいだ。
目が覚めたかと思って、慌てて手を引っ込める。
頭の中に、いろんな言い訳の言葉がぐるぐる回る。
でも、殿下は目を覚まさなかった。
あたしはホッとした。