小説(ラハフロ以外)

□桜吹雪
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「桜、というそうだ」
ラハールの言葉も、ぼんやりとしか耳に入ってこない。
見たこともない優美な光景に目を奪われていた為だ。
「キレイ・・・」
無意識に口からこぼれた感想に、ラハールは満足そうに笑った。
「これを、見に来たかったのだ。・・・お前と一緒に」
暫く呆けて見ていたのだが、その言葉に我に返った。
ラハールの言葉の意味を量りかねて、上手く言葉を紡ぐことができない。

何故、ここにこうして、殿下と一緒に桜を見ているのか理解できなかった。
「なんで、あたしを連れてきたんですか?
こんなトコ誰かに見られたら、誤解されちゃいますよ?」
そう言うと、ラハールは目を見開いた。
それから、ああ・・・と小さく頷いて、
「お前のことが好きなんだ」
と続けた。

意外な言葉。
ううん、そうじゃない。
なんとなく、分かっていた。
だから、殿下のことを考えると、ドキドキしてたんだ・・・。

「そんなの、聞いてないです」
エトナは俯いたまま呟いた。
「そういえば言ってなかったな。分かっているものだと思っていたのだ」
どう反応してよいか分からず、エトナはなるべく動揺を隠そうとして、無反応を装っていた。
顔が火照ってくるのを感じた。
それを悟られないように、ますます俯いた。

不意に気配を感じ、振り向く前に抱きとめられた。
すぐ近くに、ラハールの息使いを感じて鼓動が高まる。
「な、な、な、なんですか!?」
自分でもおかしいくらい、声がうわずってしまう。
「花びら」
目の前に回されたラハールの手のひらを開くと、中からピンクの花弁が現れた。
髪についたのを取ったのだ、と分かると、ますます鼓動が速くなった。
まるで無数に舞う花吹雪にリズムを合わせているかのように。
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