小説(ラハフロ以外)

□涙の雫
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「憎いかだと・・・!?よく、そんなことが聞けたものだな!」

ラハールの肩が怒りで震える。
憎悪のオーラが後ろで見守っている仲間たちまで、焼き尽くすようだった。

「殺してやる・・・!!殺してやる―――!!うわああぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

ラハールは剣を取り、まっすぐにラミントンに向かっていった。



勝負はあっけなくついた。
ラミントンからは、抵抗が感じられなかった。
そう、まるで死を覚悟しているような。

剣を振り上げたラハールの動きが、止まった。
切られるのを待っているかのようなラミントンから、剣を降ろす。


「・・・どうしたんです、殿下?」
空気が変わったことを読み取ったエトナが、おそるおそる訊いた。

「・・・やめた」
「えっ・・・?」
「いまさら、こんなことをしても、フロンが帰ってくるわけではない。
・・・それに、あの愛マニアがいたら、オレさまを止めていただろうからな・・・」

エトナは、目を見開いた。
ラハールの目から、大粒の涙がぽとり、と落ちたのだ。
驚いたのは、エトナだけではなかった。
ラハール自身、こぼれた涙を信じられないもののように、見つめた。

「これは・・・。涙・・・?
そうか・・・。
オレさまの体にも涙などというものが流れていたのだな・・・」

ラハールは、エトナのほうへ向き直った。

「・・・エトナ」
「はい、殿下」
「・・・あとのことは頼んだぞ」
「で、殿下・・・?」

ラハールの表情は穏やかで。
しかし、何かを決意したかのような。
エトナは、そんな顔を見たことがあった。
そう、あれは、あの時の王妃さまと同じ顔・・・・!

「もしかして、殿下・・・!」

駆け寄ろうとするエトナを、ラハールは制した。

「自分の命を犠牲にしてオレさまを救った母上の気持ち・・・
ようやく理解できた気がする」

そこにいる全員が、ラハールのしようとしていることを知った。
しかし、ラハールの心中を思うと、足が動かなかった。

「お前・・・!自分の命を捨てて彼女を救うつもりか!?そんなことが・・・」
「・・・さあな。だが、今のオレさまにできるのはこんなことぐらいだ・・・」
「ラハールちゃん・・・!」
「・・・さらばだ」
「殿下!!」


ラハールは片手を掲げた。
強い光が、そこへ集中する。
ラハールの、命、そのもの。

「ハァァァァァァァァアアアッッッッ!!」
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