小説(ラハフロ以外)

□涙の雫
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ラハールに、迷いはなかった。
自分の命と引き換えに、フロンが助かる。
それなら、何を迷うことがあるだろう?

ラハールが、眼前のユイエの花を見つめたとき―――。


「お待ちなさい!!」

目の前に現れたのは、中ボスだった。

「なにしに来た?オレさまは見てのとおり、忙しいのだ。
勝負なら、お前の勝ちでかまわんから、邪魔をするな」

「フッ・・・。
あなたも、ようやく母さんの気持ちがわかったようですね。
あなたに愛や友情の大切さを教えてくれたみなさんに感謝しなくてはいけません」

ラハールは手を下ろし、中ボスへ視線を向けた。
ラハールに集まっていた光は散っていった。

「・・・なんだと?」

「母さんからもらった命を粗末にするもんじゃありません。
ほら・・・。よく、ごらんなさい」

中ボスが示した先に、全員の視線が注がれる。
淡い光が浮かび、ユイエの花に、集まる。

ユイエの花が・・・!

全員が、瞬きもせず、見守る中。
ユイエの花が、フロンの姿に変わった。

「フロン・・・!!」

無意識に、ラハールは歓喜の声を上げていた。
フロンは、きょとんとしながら、自分の体を確かめ、それからラハールを、見た。

「・・・あれ?ここは・・・?わたし、罰を受けたはずじゃ・・・?」

「そうです。あなたは天使見習いの資格を失い、堕天使となったのです」

「あっ・・・!」
「フロンちゃん、そのカッコ・・・!」
「!これは・・・!」

フロンの衣装が、青い天使のものから、赤い堕天使のものへと変わっていた。
羽や耳もエトナと同じ、悪魔のものに変わり、シッポまではえていた。

フロンはそれらをひとつひとつ確かめるように、ぐるぐると回ってみせた。

「フフフ・・・。それが大天使ラミントンの与えた罰です」
フロンの様子に、中ボスは満足げだ。

「なに?では、フロンの命を奪うつもりは最初からなかったというのか?」

「もちろんです。彼女は天界にとっても、魔界にとっても、大切な人ですからね」
「どういうことだ?」

「大天使ラミントンは、ある人物とともに
天界と魔界を昔のように一つの世界にしようとしていたのです。
そのために天使見習いフロンを魔界へ送り込み、あなたと出会うように仕向けた・・・。彼女と、あなたは二つの世界をつなぐカギなのですよ」

「オレさまとフロンが、カギ・・・?」

ラハールとフロンは、顔を見合わせた。
中ボスが言っていることは、よく理解できなかった。
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