小説(ラハフロ以外)

□きっとあなたは来ない
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アイテム界。
殿下の予想通り、二人だけでも難なく進んでいけた。
慣れてきた戦闘に、いつのまにかあたしの注意は、隣で剣を振るう殿下にだけ向けられていた。
小さな体に、大きな剣を振るう殿下が、何故かかっこよく見えてきて。
生まれたときからお世話をしているあたしが、こんなこと思うなんて、笑っちゃうほど不思議だ。
でも、一度認めてしまった想いは、止められない。


「―――エトナっ!!」

殿下の叫び声に、はっと我に返ったときは、もう遅かった。
目の前が真っ赤に染まり、肩が燃えるように熱い。

世界が回り・・・背中に地面を感じたが・・・あたしは、そのまま意識を失った。



どれ程経ったのだろう?
気が付けば、そのままの場所に、仰向けに転がされていた。
起き上がろうと力を入れると、激痛に顔が歪む。
とてもじゃないが、自分で起きられそうになかった。

顔だけを小さく動かし、周囲を探ってみる。
どうやら、ひとり、取り残されたらしい。
殿下の姿も・・・ない。

そう分かったとたん、胸が締め付けられるように痛んだ。
体の痛みなんて、ふっとぶくらいに。

他のことに気を取られていて、敵の攻撃を喰らったのだ。
あれほど、殿下があたしの腕を信用してくれていたのに・・・。
“腹心の部下”としての期待を裏切ってしまった。
それだけが、あたしの存在価値だったのに・・・。

戦闘で役に立たないあたしに、殿下は呆れたんだろう。
もう一度・・・!
切にそう願うが、もう無理だと頭の中で声がする。

きっと、あなたは来ない。
失った信用は、もう取り戻せない。
そう思ったら、目頭が熱くなった。


その時。
背後で、物音がした。

こんなときに・・・敵?!
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