CP ーotherー
□They know HOW TO DISMANTLE
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舞台は、なるべく広い処を。
「君が、ラリー?」
広々とした校庭の中で、多くの木の中にぽつんと1つだけ聳える杉。その木の下で佇んでいたショートカットの少年に、長髪の少年が話し掛けた。
「ああ」
ラリーと呼ばれた少年はポケットから右手を出し、長髪の少年に伸ばした。
2人は軽く手を握り合う。
「僕はポール。ポール・ヒューソン。ギターが出来る」
「ふぅん。丁度良いね。僕はドラムだ」
ラリーが笑うと、ポールもにっこりとした。
高校の掲示板に“バンドメンバー募集”の張り紙をラリーが張って2日後。ラリーは張り紙に“一週間以内に杉の所へ”と書いていた。同時に、これは来ないだろうなとも、思っていた。
そういう矛盾を抱きながら、ラリーは毎日杉の所へ向かっていた。
杉は校内に厭という程生えている。一番目立たないのがこの校庭のだ。どこに自分が居るかを分かってくれる奴は、たぶん仲間だろうとラリーはぼんやり考えていた。
ポールは辺りを見回して戯ける。
「それでラリー、僕らのメンバーってのは?」
「悪いな、今の所ポールと僕だけだ」
「へぇ、それじゃ随分とデジタルなバンドになるね」
2人はまた笑い合った。
「で?ポール、君はどうするつもり?」
「これから毎日ラリーとここへ来るよ。あと5日もある。誰か来る筈さ」
よく見ると彫りの深いポールは、楽しそうに答えた。