CP ーotherー

□Out of control
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部長に呼ばれたのは珍しい事ではないが、小さな会議室に二人だけになる事は珍しい事であった。










「何でしょうか」
「お前さん、歌上手いよな」
「は―――――?」










ダグラスは困惑しながら部長を見る。










「NOBUとかベニバナの近くにある、カラオケとかいう処に良く行くらしいな。ブランドンがお前の歌が上手い、バンドでもやれば絶対売れると言っていた」










―――――後で同僚とは色々話し合う必要がある、とダグラスは思った。










「これから半年はずっと仕事だ。ダグラス、お前にはこのバンドのヴォーカルオーディションに出てもらう。他の受験者には必ず抜けてもらう様に言い含めてあるし、お前の声なら合格するだろう。そうしたら奴らと“仕事”をしてもらおう」
「“仕事”?」
「奴らの正体は窃盗団だ。バンドならではの結束力と行動力で、全員未だに前科なしの強者だ。一度は検挙したが物は売った後で、これはライヴで儲けた金だと言い張り、そのまま釈放された。今回のは表向きメンバー募集だが、言ってみれば半年後に盗むと言っている様なものだろう」










ダグラスは目の前の資料を見る。データを見る限り、只のバンドである。






各メンバーの名前の下に有る犯罪歴が何十行も連なっているが。










「盗み終えると、奴らはこのロサンゼルスから姿を消す。どうせヴァケーションにでも行っているのだろうな。しばらくすると奴らはバンドとして稼ぎ始める。そして大体半年後、犯行に及ぶ」
「それが判るのならば、尾行なり職質なりすれば良いのでは?」
「そんなに甘くないんだよ。奴らは私達警察に気付くとすぐに計画を畳む。目標も変える。そのインターバルはひどく短く、ちょっと姿を見失ったと思ったら何処かで何かが盗まれている、となるのさ。そして確実な証拠も絶対に残さない。こりゃあ、内部に誰かを送り込んで証拠を掴むしかないだろ?」
「今回はチャンス、しかも最初で最後の、という訳ですね?」










ダグラスが言うと、部長は微笑んだ。










「これで一緒に奴らも終わりにしたいな。さて、私は標的の店主として半年間潜入する事になる。お互い頑張ろうじゃないか」
「え、貴方もですか? ステイズモア部長」










その言葉を聞いて、ロバート・ステイズモアはダグラスに向く。










「今回は何と、標的はもう分かっているのさ。アッパー・ブロードウェイ・ストリートの質屋の奥に仕舞われた赤いダイヤモンド、レッド・スターライト。奴らが前回、取り逃した物だ」
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