CP ーotherー

□報いの一矢
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「――納得がいきません」
いつもの昼休み、いつもの屋上。
人気(ひとけ) のないこの場所に柚木と並んでベンチに座り、昼食を広げることも、香穂子にはいつものことだった。



「何に対して言ってるの?唐突に言われても主語が無くちゃ分からないんだけど」
不遜気味に答える声の主は、大仰そうに座り、視線を本に落としたまま、片手間で恋人の戯れ事に付き合っているような、そんな風情だった。
――今の彼の姿を見たら、一体何人の生徒が素直に現実を受け入れるのだろう。隣をちらりと見遣り、そんなことがふと頭をよぎる。


いつでも優しく、誰に対しても穏やかな、理想の王子様こと柚木梓馬先輩。
現実は、背筋がぞくりとするような笑いがとてもとても似合ってしまう、究極のサディストこと柚木様。


香穂子の前でしか剥がさない、化けの皮の下の表情に見慣れてしまった今では、むしろ猫被っている方がうすら恐ろしく見えたりもするのだが、それは黙っている方が賢明な事がらであるので、あえて口には出さず問いへと答えることにした。


「四六時中、先輩が私を拘束することが、です」
「タコさんウィンナーを頬張りながら言う事じゃないな」
――それは関係ないじゃないですかっ!
できればそう突っ込みたかったが、哀しいかな、指摘通り口の中にはさっきぱくついたタコさんウィンナーが入っていて。
勢い付いたはずみに「むぐっ…」と喉に詰まらせた。
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