CP ーotherー
□恋人たちに5のお題
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02.ラブコール
夜の海は穏やかだった。
クルーたちがそれぞれにシャワーを済ませてハンモックに揺られる頃。
サンジは一人キッチンに居た。
大きな寸胴鍋がくつくつと煮立っている。明日の為に仕込みをしているのだった。
丁寧にアクを掬い、味を見る。
「…よし。これで完璧」
満足気に頷いて鍋に蓋をする。そして火を消すと壁にもたれかかって煙草に火を付けた。
(…静かだ)
聴こえるのは微かな波の音と、自分の呼吸音。
ゆっくりと煙を吸い込んで、吐く。
仕事をやり遂げた充実感と適度な疲労が心地よい眠気を誘っていた。
(アイツ、もう眠ったかな)
煙を吐きながらふと思う、緑の短髪の男。
あんなに昼寝をしておいてよく夜に眠れるものだ。
(いや、…確か夜中に起き出してトレーニングしてたりするよな…)
物音に眼を覚ますと彼が夜中に部屋を出て行く後姿を目撃することがあった。
トレーニングならば昼にやればいいものを。折角一緒に寝ている時だったのに
―――って、
「何で今、俺がアイツのことを考えてんだよ…」
そう言ってサンジは壁にもたれかかったままずるずると床に座り込んだ。
我ながら女々しいと思う。
ふと夜中に眼を覚ました時に相手のぬくもりを確認したいんだ、なんて。
口が裂けても伝えられることは無いだろうけど。
くだらない思考を吹っ切る様にサンジは煙を吸い込んで、溜め息を混ぜながら吐き出した。
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