CP ーotherー

□19才
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 ―――煙草の、匂いが。


もう自分では分からない位体に染み付いてしまった。
海の匂いや食事の匂い、



 ――――もしかしたら、血の匂いだって。






“汚れてる魂だけを 取り除くのが無理なら”






 償いと、恩返し。



 義理だとか借りだとか、そんなモノじゃ量れない過去。






 そして






 ガキっぽい、くだらない夢。それでもあの人と同じ夢。



19才になった今でも静かに燃え続ける限りない野望。






“どちらに歩けば それを未来と呼べるのでしょう?”






『オールブルーを見つけるんだ』




“宙ぶらりんな ユメ 19才”




『俺はずっとこの店でコックを続ける』




“宙ぶらりんな ウソ 19才”











『剣士として最強を目指すと決めた時から 命なんてとうに捨ててる』






強い強い彼の言葉は、厭な鋭さを持って身体中を這い回った。



地に足着かない僕は、その強さに憧れて空虚にならないうちに耳を塞いだ。






“クロアゲハチョウになって 誰からも愛されたい”







存在を煙たがられてもただ必死に。己に出来ることはすべてやってきた。






大人だと認めて欲しくて。





あの背中に近付きたくて。





 そして僕は






恥じることの無い腕と強さを身に付け、たとえ一人になったって生きて行けると自負していた










 …つもりでした。










それがいざ、野望を掴んで来いと解き放たれたとなると。



あの人の大きさが、存在が、心の中で。



必死に耳を塞いでいる手を退かして、声を張り上げて叫ぼうとするから。






間違っても依存なんかしていない。



勿論頼ってもいない。






それでも…

それでも許されるならば。









 いつか同じ海の上で。






 ――――あの人とまた、口喧嘩がしたい。










“九分九厘ないとしても ほんの一瞬でいいの いいの…”
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