オリジナル小説

□昔々のおはなし
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 昔々、あるところに小さな女の子と大きな狼が暮らしていました。
女の子は、美人ではありませんがとても可愛らしく長くて絹のような漆黒色の髪が自慢でした。
狼は、大の付くほど果物が大好きで女の子同様、ふさふさで朱色の綺麗な毛並みが自慢でした。
二人の住んでいる島の周りは一面樹に囲まれ、その周りは海で囲まれています。
二人のほかに、住んでいる人は誰もいません。

二人の家は、大木の上に建っています。
家はそんなに大きくありませんが、二人で暮らすには十分な大きさです。
二人に共通している所は、瞳の色が血のような紅いところです。
女の子の名前は、鴉
狼の名前は、朱
お互いに助け合いながら二人は暮らしています。


「朱、今日は魚にしようか」
「なら、何匹かパイナップル漬けにしておこう」
「・・自分で食べる分だけにしてよ」
二人の家の中は、簡単なキッチンと楽器と簡単なベッドが置いてあるだけです。
そして、部屋の片隅には色々なモノが転がっています。
ネックレス,どこかの国の民族衣装,ナイフ,その種類は様々です。
「朱、魚取りに行こ」
鴉が黒いシャツとズボンを穿き、部屋の片隅のナイフを手に取り朱がバケツを銜えて家を出た。
家を出て、少し歩くとキラキラと水面が光る青い海が広がっています。
「ホイっと」
鴉がナイフを水面に向かって投げると、そこが赤く染まり魚が浮きあがった。
「俺は、果物採ってくる」
「自分で食べる分だけだよ。この前みたいに欲張って取ってこないでね」
「・・わかってる。それに、余った分は保存食にしただろ」
バケツを銜えて、朱が近くの林に生っている実を鋭い牙で器用にバケツに入れていきます。

「朱」
三時間ほど経ち日が真上まで昇ってきた頃、鴉が朱を呼びにやってきました。鴉は、魚の目玉にロープを通して肩から下げています。
「どうした?」
「そこに人が倒れてた」
「人?」
「近くで船も見つけた」
「生きてんのか?」
「多分。ほっとけば直死んでた」
「つー事は、助けたんだな」
「今、家で寝てる」
朱がバケツの中身を確認すると、ため息をついて歩き出した。
「ほら、帰るぞ」
「うん」
収穫物を落とさないように、二人は木の枝を飛び越えていきます。
「・・鴉、もし拾った人間が俺達に危害を加えようとしたら・・・どうする?」
「生活の邪魔になるなら殺す。でも・・なるべくしたくない」
「そうか」
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