オリジナル小説

□昔々のおはなし 2
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ヒュイの怪我がほぼ治った頃、おはなしは動き出しました。
また−−新しいおはなしが


「もう怪我は治ったでしょ。出て行け」
鴉は無表情で言い放ちます。
朱が口に何かを銜えています。薄茶色の葉で包まれた小さな包みです。
「三日分の保存食だ。せめてもの情けだ、もってけ」
「ちょ・・ちょっと待ってくれよ!こ、こんな所に放り出せたら生きていけない!せめて、救助船がくるまで・・」
鴉と朱が顔を見合わせます。
「・・・ここには救助船は来ない。潮の流れや渦潮の関係で船は近付けないし、気流も他の土地とは異なっているから飛行機でも無理だ」
「それに」
鴉が口を開くと朱が複雑そうな顔をします。

「ここには・・私達がいるから」

空間に冷たい風が通ったように空気が張り詰める。
「・・聞いたことぐらいあんだろ?昔、サビナ王国に現れた。神獣,怪,化け物・・まあ様々な呼び名があるが、王国を騒がせた者を」
「ま・・さ、か」
「歳をとらずに永遠の時間を生きる者。人は魔女と呼ぶ。そして、人は拒絶する」
青年が、確信になった言葉を紡ぐ。
「二十年前に死刑にされた・・・魔女と使い魔・・・・?」
「正確には島流しな。まあ、俺等にとっては楽園だけど」
青年は、額に脂汗を流して声にならない叫びをあげて家を飛び出した。
「・・鴉、これでよかったのか。結構、気に入ってだろ?あいつの事」
「別に・・只の気まぐれ。それに・・・」
「『海岸に小さな小屋を建てから、運が良ければ生きていける』ってか?感情を表に出さない癖して優しいトコあんだよなぁ。鴉は」
鴉がプイっと顔を背けます。そして、無表情で一言

「・・でも意味無いかもね」
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