オリジナル小説

□昔々のおはなし 3
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昔々の小さな島のおはなし。
そこには、小さな魔女と真っ赤な狼が住んでいます。
魔女の名前は鴉。狼の名前は朱。
二人は小さな島でひっそりのんびり暮らしています。
島の東西南北には様々な気候があって季節はありません。
正確には、東西南北それぞれに季節があって場所によっては雪も降っています。
魔女の魔法なのか・・只の偶然の奇跡なのかは本人にしか判りません。
今日も、魔女と狼は生活しています。



「家移動しよ?」
朱が鴉に擦り寄ってきて、鴉が本から目を離しました。
「・・何、いきなり」
「ずっと、春側に住んでんだからさーたまには秋側とかさ」
鴉が本に視線を戻しました。
「家移動するにしても、木材の調達とか、壁補強やらですごい労働だし」
「魔法使えば一瞬だろ。折角、持ってる力も使わなきゃ意味無いぜ?・・もう使っても騒ぐ連中も居ないんだしさ」
「今日の夕飯は、猪の生肉にしようか」
「・・・遠回しな嫌がらせヤメロよ」
鴉は本をパタンと閉じると、部屋の片隅にある高価そうな布が張られた化粧箱から櫛を取り出しました。
その櫛は、小振りではあったが漆が塗ってあり細工も桜の花がイメージの細工がしてあってとても綺麗だった。
鴉はそれを朱に差し出しました。
「髪梳かして」
「相変わらず唐突な・・・じゃ人型にして」
鴉の目の前にちょこんとお座りをしている、朱。
鴉が朱に一旦手を伸ばすが、少し躊躇う様にして指を曲げる。
「はーやーく。この形態でその櫛使うと傷がメチャクチャ付くぞ。いいのか?」
「・・わかったよ」
鴉が右手の人差し指を朱の眉間に当てました。すると、淡い光が朱を包み長髪の痩躯の青年が現れました。長く伸びた手足には、細いながらも筋肉がしっかり付いており頭部からは真っ赤な髪が伸びています。目鼻立ちも整っており俗に言う美青年です。一つ問題を挙げるとするなら・・・
「最近、人型になってなかったから・・何か開放感たっぷりってゆうか」
「それだけ、裸で堂々としてられるならそうだろうね」
真っ裸だった。

「か・ら・す・ちゃんv」
マッパの元狼(朱)が少女に後ろから抱きつきます。
「今更、指摘するつもりは無いけど背中に当たるから・・・アレが」
「じゃ服出して」
鴉が指をパチンと鳴らすと、服が出てきました。
紛れも無くソレは、女物。
ワンピースのような形に狼の刺繍が施されて、とても綺麗です。
「さーんきゅv」
鴉は、朱に女物しか着せないのです。朱も満更でも無い様なのでいつの間にかこれが普通になりました。
その理由は―――今は置いておきましょう。
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