鳳宍
□甘い運命
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「よし、できたっと」
宍戸は後ろ手でエプロンを解き、上機嫌で出来上がったばかりの朝食に視線を移す。
ハムエッグにカリカリに焼けたチーズトースト、簡易サラダ。
そして鳳の好きなミルク多めのカフェオレ。
「俺もやればできんじゃん」
簡単なものばかりだが、こんな風にまともに朝食を作れるようになったのは鳳と一緒に暮らしはじめてからだ。
元々努力家であった宍戸は料理の練習を重ねていくうちに、みるみる上達した。
まぁ一番の隠し味は愛だけどな。
無意識に口にした言葉に、長太郎のアホが俺にも伝染しちまったと宍戸は頬を染めてくしゃっと頭をかいた。
「長太郎、起きてるか…っと」
一応まだ寝ていたら可哀想なので声を潜め、寝室を覗き込む。
鳳は規則正しい寝息をたてて、腹部をゆっくりと上下させていた。
「なんだよ、この寝ぼすけ」
折角の朝食が冷めてしまう、そう思いながらも愛しい恋人の寝顔を愛おしげに見つめる。
(寝顔は可愛いのにな)
それじゃあ起きてる時は可愛くないみたいじゃないですか!
鳳が起きていたらきっとむくれてそう返されるだろうなぁと宍戸は声を抑えて笑った。
中学の頃鳳に出会ってから今まで。
鳳も更に逞しく、大人の顔立ちになったが寝顔は変わらず昔のまま。
宍戸は鳳の細糸のような銀髪を指で払い、睫を伏せ微笑んだ。
(お前が隣にいる生活が、こんなに嬉しいなんてな)