novel
□透明な記憶…番外編
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『斉藤診療所B』
〜追憶の空〜
人には誰しも
過去がある
生きている限り
過去がある
ふと甦る
忘れられない…時
「………明日は雨。」
長く長く空へと伸びるビルの木々が青い空を突き刺そうとしている。その枝の間を抜ける白い雲。正午を過ぎてから風は強さを増した。
斉藤は診療所の自分の部屋から小さな明かり窓から空を見ている。今日は客もこない。椅子に座り全身の力を抜いて息を吸っては吐く。
「…………雨。」
多くの来客から謎の多い人物とされている斉藤。だが彼も人。生きてきた時間の分だけ過去がある。だか雨の日だけは彼の緊張感を緩ませる…ある記憶が甦る。それはまだ斉藤がこの街に流れ着く前。未来を描いていた頃。