novel
□透明な記憶…番外編
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『二月十四日〜type T 』
トシ
たいていの女は俺をそう呼びたがる…親しみをこめて…いや、違う。
俺をそう呼んでいいのは近藤さんだけだ。
「トシ、また出かけるのか?おまえが部屋に籠もる姿を見てみたいもんだな。」
組の玄関で出くわしたのは近藤勇。俺の親友であり、近藤組の頭。
「野暮用だよ。」
「不摂生もいい加減にしろよ?」
「うるせぇ!」
今日は二月十四日。世間はチョコレートだの愛の日だのと騒いでやがる。俺にはそんな物は関係ない。今日も組の貸した金を取り立てに行くだけだ。近藤には野暮用だと言ったが、これは仕事の一部。組の汚い部分は俺の担当だ。これから取り立てに行く女も、期限をすぎても利息さえ払わねぇ。だが相手が女だと話は早い。てっとり早く金を稼げる場所があるからだ。そこへ売り飛ばして俺は金を受け取る。身売りのようなもんだな、いわゆる体で稼ぐ商売をさせるって事だ。
「この時間ならいるはずだ………。」
俺は女の住むアパートに着くと裏手に回り、部屋に明かりがつくのを待つ事にした。