novel
□透明な記憶
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「きみ、いくつ…?」
たくさんのネオンが光る駅で僕は電車をおりた。
改札を出ると、すぐに若い男が話し掛けてきた。
「じ、十八…。」
「そっか、高校生?暇なら遊ぼうよ。」
「う、ん…暇……。」
本当は十六才。
だけど今日からは十八才だ。知らない男に手を引かれて僕はネオンの中へと飲み込まれていった。
赤や黄色に点滅する照明や看板。テレビでしか見たことのなかった物が、すぐ目の前にある。クリスマスの街は一層華やかに彩られていて、綺麗で…僕は見とれてしまった。
「ねぇ、君…働いた事あるのかな。実は俺、スカウトやっててさ。」
「スカウト?」
男と入ったファーストフード店。朝早くに孤児院を抜け出してから、僕は何も食べていなかった。甘い炭酸飲料がお腹に染みてゆく。
「ない、です。」
返事も疎らに僕は一気にストローで飲み干した。
「それじゃ、働いてみなよ。楽しくてお金もたくさん貰えるよ。どう?」
「なにするの……?」
ポテトを摘もうと延ばした指を男に掴まれる。
「簡単だよ、客に笑顔でわらってりゃいいんだ。」
男の不適な笑みに思わず指を振り払った。
「……や…。」