novel

□透明な記憶…番外編
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「百万ある。これで足りるだろう。」

「えぇ。」

斉藤は金を出さない者には治療は行わない。大金を払えばどんな疚しい客でも受け入れる。それが闇医者と呼ばれている由縁だ。斉藤は医師免許を持ち、陽の当たる場所でも開院できる腕がある。だが、この狭い路地裏に住み着いて大金を稼ぐ。金の亡者か…はたまた理由あっての事なのか。彼の素性や過去は謎に包まれている。

「頼む。」

男は斉藤に手を添えられ手術室に入った。

「…………。」

淡々と手術の準備を進める斉藤。男は手術台の上に横たわり静かに目を閉じた。流れる血を止血され、腕は動かす事もできなく固定される。

「この腕は、元に戻せるか?」

麻酔用のマスクを斉藤が男にかける。男は一言だけ言い、深い眠りに落ちた。これだけの裂き傷だ。腕の肉が繋がったとしても元通りに動かせるかどうか難しいところだ。今、斉藤にできる事は一つだけ。この腕を元の形に戻す。金さえ積めば最善を尽くす。そういう男なのだ。

「おまかせください…名も知らぬお方。」
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