進撃の巨人

□月曜日のたまご
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月曜日のたまご



月曜日、朝8時50分
エレン・イェーガーは自転車に乗って市街地の中心部を走っていた。
通勤のピーク時間は過ぎているが、1週間の曜日の中で一番嫌悪されがちな月曜日に、道行く人の表情はあくびを噛み殺したような、だるそうな顔をして歩いている。
しかしエレンは朝は6時半にきっちり、スッキリ目が覚め、朝からわくわくしていた。
月曜日!なんて素敵な響きなんだ!
そうして自転車を漕ぐこと数十分、目的地のマンションの駐輪場に到着した。
(うん、9時。)
エレンは少し前にもらったカードキーを使って、マンションのエントランスの中に入った。手にはピクニックに持っていくようなバスケットを持って。
25階建てのマンションの7階。目的地はそこにある。
インターホンは鳴らさない。家主が寝ているかもしれないから。(以前、鳴らしたら運の悪い事に眠りの最中だったらしく、睡眠妨害だと蹴られた)
「おはよーございまーす…」
エレンはそっとドアを開けて入り、玄関先で少し小声で挨拶をした。
返事はない。
しかし物音はする。今日は彼はもう起きているようだ。
靴を脱いで丁寧に揃え、リビングへ向かう。…とその時浴室のドアが開いた。
「…お前は人の家に上がる時、無言で上がりこむのか。」
声の方を振り返ると、そこにはこの家の主リヴァイがタオルで髪の毛を拭きながら出てきた。
(わゎっ、リヴァイさん、お風呂上がり…!)
リヴァイは裸にバスローブを羽織っただけという、非常に無防備な格好をしていた。
若いエレンには朝から嬉しい光景である。ついでにパンツは穿いているのかな?等という下心も順調に芽生えているのは言うまでもない。
「すんません…一応ちょっと声は掛けましたが…寝てたら悪いなと思って。」
「そうか。」
リヴァイはそれだけ言ってキッチンの方へ歩いて行った。エレンもそれについて行く。
リヴァイはグラスを2つ用意して冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し注ぎ、1つをエレンに手渡した。
「ありがとうございます!…あ、リヴァイさん朝食まだですか?俺、作って来たんですけど」
「また作って来たのか…。モノ好きな奴め。」
「今日はこの前リクエスト頂いてた、だし巻き卵作って来たんスよ」
そう、前回の朝ご飯の時にはゆで卵を持って行ったのだが、リヴァイはどちらかというと苦手らしく同じ卵料理ならだし巻きの方が好きだと言っていたのだ。
リヴァイは朝食を食べるとは言っていないながらも、手はテキパキと食器を用意していた。
パンをトースターにセットする。
「そういえばリヴァイさん、仕事から帰ってから寝られました?今日は俺が来る前に起きてましたけど。」
「ん?あー。少しな。元々帰った時間が遅めだったんだ。」
よく見るとリヴァイの顔には少し眠気が浮かんでいる。お風呂上がり、バスローブ、眠そうな顔…どれも彼のプライベートの顔。そんな顔をしている彼と同じ時間を共有しているエレンはつい、にやけてしまった。
「なにニヤニヤしてんだ、気持ち悪いな」
「リヴァイさん可愛いなって思って。」
「はぁ?」
リヴァイは照れているのか視線を反らし、トースターからパンを取り出した。
「食うぞ。」
「はい、食べましょう!俺の自信作!」
テーブルを挟んで向かい合って座る。ちょっと足が当たる。
食卓にはエレン力作だし巻き卵にグリーンサラダ、頑張ってウサギちゃんにしたリンゴもある。
パンはリヴァイが好きなホテルのパン。
「だし巻き!だし巻き食べてください!」
「うるせぇ。好きなもん食べさせろ…」
だし巻きを推しているエレンをあしらいながらも、リヴァイはちゃんとだし巻きを食べた。
「…。」
「どう?どうッスか?」
料理の評価を訊くのはなかなかに緊張する。努力はした…努力は。
リヴァイは相変わらず無表情気味である。
「俺なりのこだわりで作ったんですけどね、例えば…」
「甘くない。」
エレンの言葉の途中でリヴァイが遮った。
目が合う。
「甘くないだし巻きは、だし巻きとは言わない。なってない。」
「ええっ!俺はだし巻きは砂糖入れないんですよ。だしの風味を存分に味わえるように…」
「言ったはずだ、卵焼きは甘いものが好みだと。」
「え?あぁ、言ってましたけど…でも…」
実はエレンはリヴァイの好みを覚えていた。
しかしあえて砂糖は入れなかったのである。
(リヴァイさんは甘党、俺は辛党…でも俺の作った料理をリヴァイさんが食べて、俺色に染め上げ…たい…なんて思ったりするんだ!)
リヴァイには届く事のないエレンの心の叫びである。考えが14歳だが。
「まあ、しかし」
リヴァイはまた一口、だし巻きを口に運んだ。
「良いダシを使っているな。焼き加減も丁度いい。」
なんだかんだで食べてくれている。
うさぎリンゴも無言で見つめてから頭から食べていたけど、特に料理に関しては何のクレームも出なかった。

朝10時
朝食の後片付けを済ませ、二人でリビングのソファーに腰掛けた。
テレビを付けると主婦層向けのバラエティー番組ばかりが流れている。
「今日俺も休みなんですけど、どっか行きます?」
エレンが尋ねたのと同時にリヴァイが欠伸をした。目元に疲労が浮かんでいる。
「ん…悪りぃ、少し寝かせてくれ。」
ソファーから立ちあがり寝室へと向かう。エレンもその後を追った。
リヴァイは相変わらずのバスローブ姿でセミダブルのベッドに寝転がり目を閉じた。
本当に無防備である。
寝室に入って来たエレンを追い返さなかったのは、少なくとも彼の休日のひと時を無駄に消費してしまっているということへの謝罪なのか。
ベッドの端に座るとスプリングの軋むような、弾むような弾力が返って来た。
そのまま手を眠るリヴァイの顔の輪郭に沿わせる。
髪に手を差し込み、梳く。
(あ、良い匂いする…)
エレンが来る前に浴室で使っていたシャンプーなのかボディソープなのか何かの良い匂いがほのかにした。
口が悪い、すぐ手足が出る、そんな粗暴な雰囲気の彼の内面は、甘党で良い匂いがする。クールなようで激情家。そのギャップにほだされる。
顔の横に手をついてそっと近付いた。意外と長いまつげ、形のいい鼻、薄い唇。
唇との距離が近付く。きっと彼は気付いている。でも拒絶されない。
しっとりと合わさった唇からは暖かさと甘さがにじみ出ていた。
「ん…っ、」
少し眉間にしわを寄せた彼に微笑みかけ、エレンはバスローブの手触りを堪能することにした。
顔に沿わせていた手を首筋、肩へと滑らせるように下げていく。
しっかり筋肉の付いた肩、たくましい腹筋。リヴァイの身体はエレンのそれよりもずっと男らしく、そして年上の色気…のようなものがにじみ出ている。
エレンもそれなりに身体は鍛えているし、身長は10センチ近くリヴァイより高いのだが。
(この身体つき、最高だよな…)
邪な手はバスローブの上からリヴァイの身体を堪能する。
腰回りを撫でさすり、もう少し下げて…形の良い尻…ひょっとしたら、本当にこれはパンツ穿いてないんじゃないか…?…ちょっと指をあてると割れ目に…良い感じ…

と、ここでリヴァイの目は完全に開いた。

「ぐえっ…!」
エレンはリヴァイの膝で鳩尾を蹴られ、カエルの潰れたような声を出して悶絶した。
「てめぇ、俺は寝かせろと言っただろ。何しやがる」
身体を起こし、エレンを見下す体勢になる。
氷の視線に射抜かれながらも負けないエレンは反論した。
「そんなエロい格好で寝るからです!久しぶりに休日重なって、触れたくなるのは当然です!」
「俺の家で俺がどんな格好してようが良いだろうが。後で構ってやるから…」
とリヴァイはここまで言ってから、自分の失言に気付いたかのようにハッとした。
「…いいんですか?」
「知らん!」
リヴァイはエレンに背を向けてもう一度ベッドに転がった。
顔や耳が赤くなったりはしていないが、彼なりに照れているのは分かる。
何があったのかは分からないが、どうやら本当に疲れているらしい。
エレンはしばらく彼の背中をポンポン叩き、立ちあがった。
お疲れの彼の為に、午前中は家事をして過ごそう。バルコニーで育てているプランター野菜の世話をしたり、洗濯をしたりしていよう。
午後はどう過ごそうか。
先程の言葉をもう一度脳内再生させてニヤつきながら、エレンは寝室のドアを閉めた。



fin


エレリ現パロ
エレンも成人設定です。月曜定休のリヴァイに合わせてエレンも頑張ってお休み取ったりしている。


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