ねぇ、嘘つき

□慰めることの辛さ
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-屋上-


時がたつのは早すぎるもので…


里枝は宋介と共に屋上にいた


『二人だけで話したい』


その要望により、立ち入り禁止の屋上にしたのだ


「………」


「………」


屋上に来たまでは良かったものの…


どちらからも話さない


空白の時間だけが過ぎてゆく


「…理由を教えてくんねーか?」


「え…」


それが別れたい理由だとわかるのに時間はかからなかった


本当の事を言ってしまおうか?


でも…それだと…


「…好きになったから」


「……」


うつむき,拳を握り言う


「慧佑を好きになったから」


嘘だ


そんなことは…ない


昨日、慧佑が言ってくれた事を思い出してそう言った


「………そっか」


違う


あたしが好きなのは…


「わかった,じゃ」


そう言って、宋介が屋上から出ていく…


引き止めたい…


でも…


扉が閉まる音がした


その場にへたりこんだ


涙が溢れてくる


「……里枝…」


「……け…い……す……け」


(何で…いるの?)


そんな疑問はすぐに消えた


「……え」


慧佑に抱き締められていたから


「…なっんで…」


「…泣き止むまで…こうして…ていいか?」


「…………」


「嫌って言われても、はなさないけど…」


「…あはは」


今は…その優しさが嬉しかった




気付かれない想いは…
いつまでも燻って…







崩れていった幻想

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