祈りむなしく届かんことを
□ターゲットはいい人?悪い人?
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時間がたつのは速い
しつはそれを嫌と言うほど感じていた
(……もう,四時間目だもんなー)
黒板に書かれた文字をノートに写していく
「…つ……りつ…」
小声で呼ばれているが,しつは全く気付かない
『りつ』と呼ばれているからかもしれないが
「…りーつ…」
まだ呼ばれているが,しつは全く気付かない
「……」
それを見ていたきょうが,しつに何かを投げた
投げた物が,しつの後頭部に当たる
「??」
しつが後頭部を押さえながら横を見ると
「やっと気付いた」
と言われた
しつは軽く首を傾げた
「…どうかしたの?天浦君」
「あのさ…」
しつに声をかけたのは天浦 竜
りつの隣の席の男子生徒
今朝,しつに挨拶した人でもある
そして―
「消しゴム貸してくんない?」
「消しゴム?解った。ちょっと待ってね」
しつは,消しゴムを竜に渡した
「わるいな,サンキュ」
竜は消しゴムを使っていた
しつは頭に当たった物が何かと下を見た
(…これって…)
しつは,後ろの席のきょうを,睨んだ
だが,きょうは,しつを見ずに黒板を見ていた