祈りむなしく届かんことを

□殺し殺され生殺し
1ページ/5ページ

学校も終わり,しつは屋敷に帰っていた


「…ただいま…戻りま…した」


小さく呟くように言った


「あ…」


使用人の誰も,しつに返答はしない


その代わりに聞こえてくるのは


しつを蔑む言葉


でも,もうそれにも慣れた


十何年も続けられていれば,慣れてしまうのも当然だ


しつは使用人に目もくれず,自身の部屋がある,場所に向かった





「………」


遠すぎる


本家と,しつの部屋のある離れは行きだけで10分かかる


往復で20分だ


ここまで,遠くさせるのはよほどしつの存在を隠したいのだろう


隠すくらいなら,殺せばいいのに


いつも思う


だが隠してまでも,しつにさせないといけないのだ


子供を生ませることを―


りつでは駄目,しつでないと駄目


そうでないと,壊れてしまうから


後神が―


(壊れるなら,壊れてしまえばいいのに)


しつには関係のないことだ


後神が壊れようと,滅ぼうと


どうせ,使わないなら,すぐに殺されるのだから


しつはため息をつきながら,自身の部屋の取っ手に手を伸ばした
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ