祈りむなしく届かんことを

□赤い痕は裏切りの証
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「…で,しつが倒れたのか」


「ああ」


しつが倒れた後,竜はきょうを呼んでいた


「…そこまでは解ったけどさ,何で俺を呼んだわけ?」


きょうは,一番気になっていた事を聞いた


まだ,りつを呼ぶのは解る


でもどうして自分なのか


「それは…しつちゃんがりつの事言うとき歯切れが悪かった気がしたのと」


まだあるのかと思いながら,腕をくむ


「寝言で『きょう』って言ってたから」


「は?」


言われた言葉を把握しきれなくてすっとんきょうな声を出していた

「だから」


「否,解ってる」


もう一度説明しようとした竜の言葉を遮った


(しつが…俺を?)


目を泳がせながら首の後ろに触れた


りつと言わないのはわかる


でも何故,自分なのか


雀と言う方が正しいのではないか

そう思ったが


大して気にする事ではないと思い直して


しつを抱き上げる


「きょう!?何してるんだ」


「何って…連れて行くんだよ」


「は?」


「お前んちにおいとけねーだろ。お前の両親帰ってくるだろ?」


「そうだけど…熱出してるのに」


「うちそんなに遠くないから平気だよ」


「でも…」


竜はまだ納得しきれていないようだった


でも了解を得るまで待ってる訳にはいかない


しつを抱き,玄関に向かう


「ありがとな,竜」


「いや…」


扉を開けて,外に出る


しつを見ると口から息をしていた

うっすらと汗が浮かんでいる様に思える


(しつが熱だすなんてな…)


そりゃ,雨の中長時間いれば熱もでるだろう


(早く寝かせないと)


家に向かおうと動いた時,しつの首筋が見えた


(なっ…)


しつの首筋には赤い痕があった











釈然としない心

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