祈りむなしく届かんことを

□『わたし』と『あたし』の違い
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誰とも会わなくなって何週間かたった


会いたくなかったから,その方が気楽だった


なのに…


「まった余計な事してくれたわね」


数分前に怒りながら入って来ていた,りつがベッドに座って言った


「…何を?」


「ペンダント」


「は?」


漠然とそれだけ言われても何の事か解らない


「あんた,竜の家にペンダント忘れてたでしょうが」


「…あ」


雨の中で歩いていた時,何処かに落としたんだと思っていた


雀に貰ったペンダント


「良かった…」


小さくもらした言葉を鼻で笑われた


「馬鹿なんじゃないの?あんな安っぽいもん要る?」


「…りつに解るわけないよ,大好きな人に貰う物がどんなに大切か」


「……」


りつは文句こそ言わなかったが,冷ややかな目で見てきた


唇を噛み下を見た


りつのあの目は苦手だった


全否定されているのが伝わってくる


お前なんか…と


「…明日届けにくるって言ってたからまともな格好しといてよ」


「え?りつが預かったんじゃないの?」


「…あんた,あたしが返すと思う?」


「……」


思わない


確実に処分される


まず,ペンダントの話しすらしないだろう


「そーゆう事だから忘れんじゃないわよ。クズ」


そう言ってりつは部屋から出ていった
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