祈りむなしく届かんことを
□遠のく距離と近づく距離
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ペンダントが還ってきてから数日がたった
その間,何もめぼしい事はなかった
でも,ここ最近はいろんな事がありすぎた
軟禁生活の中で一番目まぐるしかったと思う
少し面倒だと思った
でも楽しいとも思っていた
まるで普通の生活をしているようで…
コンコンと扉がノックされた
「どうぞ」
遠慮がちに扉が開かれた
「失礼します」
入ってきたのは燕だった
燕ならなんの用かくらい直ぐに解る
「…りつが何か?」
「しつさんに学校へ行くようにと」
後神の使用人達はしつをさん付けで呼んでいた
後神の扱いにより様で呼ぶのもどうかと…
だが呼び捨てもあれで
その結果,さん付けされるようになっていた
「またですか」
最近,学校に行かされる回数が増えた
「ええ」
「…」
何を考えているのか…
「解りましたと伝えておいてください」
「かしこまりました」
燕が頭を下げて部屋を出ていった