祈りむなしく届かんことを

□逃げ道
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突然,聞き慣れない足音が聞こえてきた


きょうと顔を見合わせる


「しつちゃん,きょう君」


鉄格子の向こうに居たのは泉だった


「泉さん!?」


荏个 泉


雀の友人でしつとも交流があった

が,彼は後神とは血の繋がりは一切ない


それでよく出入りが出来たと


雀が死んでからは会うことは全くなくなっていた


なのに今,何故?


「ホントに捕まってるんだ…」


泉が若干顔をひきつらせて言った

「あはは…。泉さんは何で此処に?」


見張りの目もあったはずだから此処まで来るのは容易い事ではない

「あぁ,それは」


泉が何かを取り出した


「何ですか?それ」


きょうが覗きながら尋ねた


「此処の鍵だよ」


「…此処の鍵!?」


きょうの声が響きわたる


「きょうくーん,声でかい」


「すっすいません…」


「おっ開いた」


その声と共に鈍い音をたてながら鉄格子が開いた


「二人とも出て」


「でも…」


「いいから早く」


泉に急かされ牢屋からでた


「これ持って逃げて」


そう言って泉がしつに押し付けたのは通帳だった


「泉さん?何で…」


「雀の願いだよ。君に死んで欲しくないって」


「すずちゃんの…」


涙が溢れそうになる


「ほら,早く行って」


「泉さんありがとうございます。行こっきょう」


「あぁ」


二人は走り出した


この先にある光に向かって




いつかの切望

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