祈りむなしく届かんことを
□憎悪は形をかえて
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「は?」
きょうとしつが逃げた?
燕に知らされた事に眉を寄せる
見張りがいたはずでしょ?
何をしてたのよ
役立たず
「…早急に連れ戻して,きょうは生きたまま。しつはどうでもいいわ」
「かしこまりました。」
燕が頭を下げた
「怒り狂われないんですね」
…は?
「お二人が逃げ出したというのに」
「別に怒る必要はないもの,結果は決まっているから」
そう,既に決まっている
どうあがいても
変えることは出来ない
「まだ解りませんよ。もしあの二人が心中でもしたら」
「それはないわ。あいつらにそんな度胸はない,それに…」
もうひとつ言おうとして止めた
何であたしが
「それに?」
燕が尋ねてくる
言いたかった事を理解しているのだろう
「その前にあんたらが見つけるでしょう?」
「…そうですね。では」
そう言って燕が下がった
何で,あたしがあんな事を
『互いに大切に想いあってるから死は選ばない』
もがいた結末