祈りむなしく届かんことを

□信じる心を失っても
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「え…」


言わないでくれと頼んでおいたのに…


「何,驚いてんの?」


嘲笑まじりの言葉に言い返す事すら出来なかった


「言わないでとか言ってた…とか?馬鹿なんじゃないの」


「……」


図星をつかれる


「そんなもん守るわけないじゃん。守ってどーなんの?」


拳を強く握った


「…黙ってないでなんとか言えば。あ,あたしが言った意味解ってないとか?あんた無知だし。頭にあるのは勉強の事だけだもんね」

「…」


言い返さずに黙っていた


唇を噛んで…


りつは解りやすく,舌打ち後


「黙ってれば全て済むと思うなよ」


そう言って部屋から出ていった


『黙ってれば全て済むと思うなよ』


りつの言葉が頭を反響する


…じゃあどうすればいい?


これ以上傷付きたくないのに


言い返せば打てば響くように言い返される


黙ってたら黙ってたらで…


傷付く事しか出来ないのか


それしか


「しつ。ちょっといいか?」


厚い扉のせいで少しくぐもった声

でも声の主は直ぐに解る


…きょう


「今忙しいから」


自分でもあり得ないと思う言い訳


「は?何言って…」


「忙しいの!!」


大きな声を出す


しばらくすると…足音が聞こえた

「…何で……裏切ったの?」


小さく呟く


裏切られた訳じゃない


最初から守られる事すらあるはずがなかったのだから


ベッドに横になり涙をこぼした




「…先に裏切ったのはそっちだろうが」


扉の向こうで呟かれた声はしつには聞こえなかった









『わたし』と『あたし』の違い
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