祈りむなしく届かんことを

□『わたし』と『あたし』の違い
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〜次の日〜


「しつ」


りつに出てこいと顔を動かされた

「…」


大人しくそれに従う





離れから本家までの道を歩く


どちらからとも一切会話はなく響くのは二人の足音だけ


居心地がかなり悪かった


この時だけ恨む


本家と離れをここまで離したことを


「…あんたさぁ」


突然りつが話しかけてきた


「何?」


僅かに身構える


「竜に惹かれてるわけ?」


「……は…?」


思いがけない言葉に立ち止まる


「何,立ち止まってんのよ」


眉を寄せて言われた


「…りつが変な事言うから」


「変な事?はっ事実でしょ?」


「………冗談がすぎるよ」


「…そっかあー」


りつが卑屈な笑みを浮かべた


「あんたは,きょうが好きなんだもんね」


「っ…」


何で…


そんな事を言う?


嫌み?


「なっんで…そんなこと…」


「…何となく?」


「何となくって…普通っ」


「何言ってんの?普通って…あんたの普通とあたしの普通が一緒なわけないでしょ」


りつが腕時計を見て歩き出した


それを見て後を追う


「自分を中心で考えないでくれる」
りつが一瞬だけ振り返って微笑んで言った


(…それはりつも一緒じゃない)


内心ではそう思ったが,何も言わなかった
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