中編用

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それから一言も話さずに店まで歩いた。

ロビーで私を見たオーナーが何かを言おうとしていたけど、どうせ大したことではない。




適当な部屋を選んで使用中の札をかけてから部屋に向かう。


ばたんと音がして扉が閉まる。






「……名前ぐらい教えろよい。」

「聞いてどうするの?」

「教えろ。」

「……紅音。」

「ここの金は?」

「気にしなくていい。」

「そうかい。」





部屋には大きめのベッドとバスルーム。


あとは戸棚とかが置いてあるけど、基本使われてない。





「お風呂、入る?」

「時間がねぇんだよい。」

「あ、そ。」

「さっさと脱げよい。」

「それが女を抱くあなたの態度?」






振り返った刹那、体がふわりと浮き上がり、柔らかいものの上に落とされる。





「きゃぁっ!?」

「そういう声も出すのかよい?」

「いちいちむかつく人。」





睨み返してから青ざめる。

マルコの瞳は、冷徹に私を射抜いていた。






「悪いねい。俺はキレてんだ。優しくするつもりはかけらもねぇよい。」





そのまま服を剥ぎ取られる。





「ぃやぁっ!!」





足を無理矢理開かされてしまう。






「初めてか?まぁ、その歳でやってるのもどうかと思うけどねい。」

「う、うるさいっ!」




眦を決して言い返すも、体を反転させられてしまう。


四つんばいになってるその姿は、相手にそこを見せ付けるような姿で。





「いい眺めだよい。」

「…………っ!!」





いいんだ。

これは私が選んだ選択だ。

この男に抱かれれば、それで私の唯一の願いが叶えられる。




解しても無いそこに当てられたのは、すでに大きく硬くなったマルコのそれ。

襲い繰るであろう痛みと恐怖に目を閉じる。



しかし、私に与えられたのは痛みではなく、驚愕した声だった。





「お前、この傷…………。」




その声を聞いて目を見開く。

忘れていた。

この間受けた躾の傷が、まだ治っていないことを。



抱き起こされて瞳をあわせられる。





「この傷は何だよい?誰に付けられた?」

「こ、れは……。」

「なんでこんな傷を付けられた!」





叱責されて身をすくませる。

青い瞳から逃れたくて身をよじると、押し倒されて逃げ場を失う。

真上から見下ろしてくる瞳には怒りの感情がある。

が、それは自分に対して向けられているものではない。






「誰に、やられたんだよい?」

「なんで、そんなこと聞くの?傷が抱くことに関係あるの?」

「いいから答えろい。」

「嫌だって言ったら?」

「……そしたら、もう抱かねぇよい。このまま、帰る。」





瞳を見開いてマルコを見る。

その瞳は、真剣だった。






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