中編用
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目を覚まして最初に視界に入ったのは手枷と冷たい床だった。
瞳を動かして辺りを見れば、床と同じ灰色の壁と鉄格子。
躾けられたときと同じ牢屋だ。
たしか、地下にあったと記憶している。
首もとに違和感を感じて指先で触れてみた。
首枷だ。
足にも似たような感触がある。
完全に動きを封じられていた。
その上、動いてみてわかったが、すでにかなりの鞭打ちを受けた後のようだ。
身体が、痛い。
「……マル…コさ…………。」
瞳から雫が流れ落ちる。
「起きたか。」
聞きなれた声だ。
幼い頃から聞かされている、畏怖の対象となる声。
オーナーか。
「続けろ。」
身体に何度も何度も鞭が打ち下ろされる。
「あ゛ぁっ!!あっ!いたぃっ!あ゛っ!!」
「いい悲鳴だな。」
「い゛っ!!やっ!やめっ!あ゛ぁっ!」
赤い血が床に飛び散る。
口からも鼻からも血を吐き。
体中のいたるところが切れて。
床も身体も、鞭の唸る音がするたびに赤く赤く染まった。
もうどれくらい打たれ続けただろう。
悲鳴を出す力も無くなって、私はただ人形のように鞭で身体を打たれていた。
「もういい。後は、串刺しになれば死ぬだろう。」
「はっ。」
檻から人が出て行くのが靴音でわかった。
仰向けに倒されたまま放置される。
「苦しんで、死ね。」
嘲笑のような一言と同時に、機械が動く音が聞こえ始める。
ライトがついたかと思えば、視界に飛び込んできたのはギラリと光りながらゆっくりと降りてくる剣山。
「いやぁっぁぁぁぁあああぁぁっっっっ!!!!!」
かれたはずの声が絶叫を上げた。
「一時間半。それがお前の余命だ。たっぷりと恐怖しろ。」
オーナーの笑い声が、足音とともに去っていった。
それから数分、這い蹲って檻にすがりつき、何とか出ようとする。
が、そんなことが出来るわけが無い。
私は絶望とともに意識を手放した。
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