中編用

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決めていた。

あの日、海に出たときに。

俺は逃げられない運命(さだめ)を打ち破ろうと。

己で己を操り進もうと。

ただただ、自由に時間(とき)を生きようと。

こんな俺に。

それでも与えて欲しいと思ったこと……。






――――― 生きる今に自由を与え続けてくれ














初めて訪れた島を眺めていた。

行き交う人の波。

赤をベースにした落ち着いた町並み。


船の上から見ていたイメージと少し違う感想を持った。

船から降りてゆっくりと街を見る。



一見落ち着きを宿した町。

何の変哲も無い普通の町。

『スィロット島』

島を、ゆっくりと見渡す。

新世界には珍しい、平穏な島だ。




「…………。」




仲間のように町を探索に行こうかと思った。

が、身体はそういう気分ではないようだ。



動かそうにも動かない。

仕方なく俺は船内へ戻る。

船の中の自由な世界に返ろう。




面倒な奴に絡まれて、自由でなくなる前に。










あれからもう三日。

今日はサッチ達と島の飯屋に来ていた。



俺は白ひげ海賊団の一番隊隊長。

それなりにもてるし、そういうことで苦労したことはない。

職業というかは知らないが、海賊の船員だ。



……世界一有名な海賊の。

明日には船を出すだろう。


しかし俺達の乗る船は、自由気ままに進む。

よって、明日出向とは断言できないが。

まぁ、ログがたまる前に出ることもある。



基本、自由だからな。

船の上でも自由。

島についても、基本自由。

自由が俺達の鉄則だ。

それ以外の決まりは、一切ない。




ってのは言い過ぎか。

仲間殺しはタブーだからな。

当然だけれども。



降りたい奴は降りればいいし、乗りたい奴は大抵乗せてやる。

厳しいことも面倒くさいこともない。



店に入ってしばらく。

子供が店に入ってきた。

無表情な子供だ。




「いらっしゃい。」

「いつもの。」

「あいよ。」




店の親父とやり取りをして、一番隅の席にそいつは座った。

他の席も空いてるのに。

何の迷いも無く座ったところを見ると、指定席か。



おそらくいつもより騒がしいだろう店内。

俺らと一緒にいる女を、子供は一瞬だけ見た。






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