中編用

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知り合いか?

にしては反応が薄すぎるか。

大方、近所に住んでるか、一緒に働いたことがあるか。

はたまた、親が知り合いなのか。

そんなとこだろうな。





「………ら………なぁ。」





窓の外を眺めながらぼそぼそと呟いているのが目に入った。




「ほらよ。」

「ありがとう。」

「最近は来る回数が少ないな。」

「そろそろ時期だから仕方ないの。」

「そうか。」

「うん。」





時期?

なんの?

店の親父の感情の出かたからすると、随分と親密な中なんだな。



行儀よく手を合わせてから食事を取り出す子供。

目鼻立ち整った、きれいな少女だ。



表情を変えることもなく黙々と食べている。

どんな人生を生きてきたんだろうか。

少し気にならなくもない。




料理はぺろりと平らげられた。

出されたカフェオレらしきものを飲みながら、思案するように瞳を細めている。


何を考えてる?

眉間に皺がよりそうだ。

子供がするような表情じゃない。

子供とは普通、笑顔なものだ。

自由で、世の中の黒い部分を知らない。

無垢で真っ直ぐなのが子供だろう。



なのに、この子供は。

いったいどんな環境で育ったのか。

何をそんなに自由というものを捨てたような瞳をすることがあったのか。

首輪を付けられていた痕もない。

奴隷だったわけではないだろう。

なのに、あの瞳。



正直。

哀れな子供だ。



…………。

あぁ、そういえば。

俺にもそんな時期があったな。

自由とかそんなものくだらない、なんて思ってたな。

そんなときに親父に会ったんだった。

それで、家族が出来て。



あの頃から、サッチとはよく競い合ってたな。

今でも、あいつといるときはすごく楽だ。



本人には絶対に言ってやらないけれども。

付け上がるからな。

あいつの場合。



けど、尊敬はしてる。

料理させたら超一流で。

戦闘も強い。

それで、俺のことを誰よりも正確に読み取れる。

それが邪魔だとか思うときもあるけどな。

まぁそこはお互い様だ。

あいつがうらやましい、とも思うし。


どんなときでも笑顔を絶やさない。

辛かろうが、苦しからろうが、悲しかろうが。

そんなあいつがうらやましい。




俺には、そんな尊敬できる奴らがいすぎるぐらいにいる。

あの子供にも、そういう奴はいるんだろうか。

何でも話せる奴が。

憧れれる奴が。

尊敬できる奴が。



いないとなると、悲しすぎる。






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