中編用

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数時間後。

紅音は命を取り留めた。



手術が終わった後、正座でヤオに説教されたが、まぁ仕方の無いことだ。




そんなことより紅音を助けたかった。

説教が終わった俺は、紅音の元にとんで行った。

そして、名前を呼び続けた。




「…紅音………紅音……紅音……」




何度も呼んだ。




「……紅音…紅音。」




数なんて数え切れない。




「紅音、起きろ。……起きろよい。」




仲間に見られたら、後でからかわれそうだ。




「紅音、起きろい。」





一人、紅音の病室で呼び続ける。





「起きろい。」




ただひたすらに、願いを込めて。




「紅音、起きろよい。」




紅音の指先がシーツをまさぐる。


俺はその手を優しく握る。

頼む。

起きてくれ。


目蓋がゆっくりと開かれる。




「紅音、紅音っ。」




つい数時間前に見た、焦点の合わない瞳。

今も、目の前にそれがある。

頼むから、俺を見てくれ。

見て、また名前を呼んでくれ。




「…マ……ルコ…さ…。」




呼ばれてほっとした。

あぁ、本当に助かってくれた。

よかった。




と、ここまではよくあるドラマと同じ感動のシーンだった。


何で過去形かって?

なぜならな、紅音がな。




俺の髪の毛を掴んでるからなんだが……。






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