長編用

□巣立ち
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「あー終わった終わった。」




食堂でサッチと雑談してるところに、ハルタが入ってきた。




「どうしたの?」

「定期健診だよ。」

「ていきけんしん?」

「は?おい、紅音。お前まだやってないのか?」

「おかしいね。ナースの人に『ハルタ隊長が最後ですね。』って言われたけど?」

「いやいやいやいやι定期健診あるなんて聞いてないよ?」

「は?マジで?」

「本気で言ってる?」

「マジ中のマジなんですけどι」




ハルタとサッチが顔を見合わせる。




「ナースの伝え忘れか?」

「そうじゃない?」

「ちょ、ちょっと私医務室行ってくる!」




紅音が駆け出していった。


二人はしばらく沈黙したまま紅音が出て行った扉を見つめる。





「珍しいな。ナースが忘れるなんて。」

「それも、船内では隊長レベルに認知度が高い紅音だし。」

「だよなぁ〜。」

「カルテが棚の下にでも入り込んでたとか?」

「んなミスするかぁι?あのナース達がι」

「そっか。それもそうだね。」

「「む〜〜〜〜ん。」」













「失礼しまぁ……す。」

「あら、紅音。どうしたの?」

「あ、カリン姉さん。」

「何か用?」

「用っていうかなんというかι私が定期健診受けてないっていう……。」

「えっ!?連絡いってなかったの?」

「うんι」

「おかしいわね……。」

「ま、まぁ、いいよ!うん!今から、してもらえる?」

「それは、できるけど。でも……。」

「いいのいいの!してもらえるなら、問題ないから!」

「……。誰かが、わざと伝えなかったのね?」

「それ、は……。」

「……どうせ、聞いても言わないんでしょ?」




返事もできずに、俯いてしまう。





「私がやってあげるから、さっさと入りなさい。」

「……はい。」












それからというもの。

いろいろとあったのだ。

外で、洗濯物を干しているときに手が滑ったと水を浴びせかけられ。

頭痛が耐えられずに薬をもらったら、睡眠薬だったり媚薬だったり。

定期健診はことごとく伝えてはもらえず。

物がなくなったと思ったら、一番使われてない最下層の倉庫で見つかったり。

身体を売っただのという噂が流れるし。

しまいには、倉庫の整理中の閉じ込められて。



まぁ、事情を知ってるカリン姉さんに毎度助けてもらったのだが。



ここまでは、私の許容の範疇だった。

だから、誰が犯人だとか、どうしてこうなってるとか、誰にも言わなかった。

し、犯人に直接言い寄ることもしなかった。




だけど、この後に起こったことは、私の許容外だった。


むしろ、それは、私にとって一番最悪な事態だった。

だから、私は……。







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